大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福島家庭裁判所 昭和50年(家)381号 審判

国籍 朝鮮

住所 福島県

申立人 金興文(仮名)

国籍 朝鮮

住所 申立人に同じ

事件本人 金英子(仮名)

金美子(仮名)

金詩子(仮名)

主文

申立人を事件本人らの後見人に選任する。

理由

申立人審問の結果、申立人、事件本人四名及び金東国の各登録済証明書六通並びに李西俊の死亡届謄本等を総合すると次の事実が認められる。

一  事件本人四名は父亡金東国、母李西俊の子で何れも韓国籍の未成年者であるが出生以来日本に居住している。

二  亡金東国は昭和五〇年五月二四日死亡し、その前に昭和四五年五月二二日亡李西俊が死亡しているため、事件本人は両親を失つて親権者をなくしている。

三  申立人は亡金東国の実弟で、亡金東国の生前から共同で事業を経営し、住居も近くにあり、日常事件本人らとの接触も充分あつた。

四  亡金東国は相当の借財を残して死亡したため、その所有していた不動産を処分し、返済に宛てたため、事件本人らは現在申立人と同居し、申立人は亡金東国の事業を引継いで事件本人らの生活を維持しており、今後も継続して事件本人らの面倒をみて行く考えでいる。

五  事件本人らには父方の祖母が北海道に、母方の祖母が名古屋に各生存しているが、何れも高齢であるうえ、北海道の祖母は現在糖尿病を患い入院中であり、名古屋の祖母も目下病重く、亡金東国死亡の事実も知らされないでいる。

六  亡金東国は前記認定のように借財を残して死亡しているので、申立人はその整理と相続関係の問題解決に迫られており、事件本人らの法定代理人を早急に決定されるを強く望んでいる。

法例二三条一項によれば、後見は事件本人らの本国法である大韓民国民法によることになり、同法九三二条には後見人が法定されており、前記認定の祖母が先順位になる。しかしながら、上記祖母は何れも後見事務を執ることが出来ない現状にあること前記認定事実から明らかであり、後見人の順位を次順位の申立人(三親等内傍系血族)と解して本件を解決することも許されるところではあろうが、法定の順位を前記認定事実から直ちに後順位者とする解釈が自明のことともいえないことからすれば、むしろ、実質的には法例二三条二項にいう後見の事務を行う者なきときに該当する場合と考えることも許されると解するので、同法条項により日本国法による解決を相当と考える。

以上の理由によると申立人が事件本人らの後見人としては極めてふさわしいこと前記認定事実から明らかであり、申立人を事件本人らの後見人に選任することを求める本件申立は相当であるからこれを認容することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 片岡正彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例